九州国立博物館で開催中の特別展に行きました。
密教以外の要素も色々あり、全体的に時系列に沿った展示になっていて、わかりやすいチベット文化入門になっていたのではないかと思います。
では、個人的に印象に残った展示に絞って感想など。
長くなるので箇条書きにしますね。
(画像はぶろぐるぽにエントリーすることで博物館から提供していただいたものです。)
その1 吐蕃王国のチベット統一
吐蕃の成立から説き起こした最初の展示は、私にとってはいい導入でした。
「吐蕃」となれば話は別、「チベット」「ポタラ宮」の語につきまとう現在のアレコレをとりあえず措いておいて、歴史の世界に入ることが出来たように思います。
↑
正面に見えているのは、像について書いた紙をランダムにひいて、出たものを探そうというコーナー。おみくじのような体裁で遊び心満点。
友人を見ていたら、ちょっとこれに引っぱられ過ぎかなぁとも思いましたが、チェックポイントがあると鑑賞にもメリハリが出ますね。
その2 パドマサンバヴァ
チベット仏教でこの方の存在ははずせません。
綺麗なレリーフですが、ツェチュ祭のイメージがあったので、壁画の一部だったようなコレはなんだか寂しい気がしました。
しかも剥がしてきていると言うことは、以前はどこにあったものなのでしょう?
出自も気になる展示でした。
その3 祖師たち①
吐蕃後の仏教を担っていった祖師たちの像も、大変興味深いものでした。
アティーシャ、ミラレパ、ツォンカパ、・・・と聞き覚えのある名前が続く中、初めましての名前を発見。・・・・・マチク・ラブドゥンマ?え?誰それ?
この方は、像ではなくタンカで、私たちにはおなじみの教え「捨身」の図だったので、とっても気になりました。
帰って調べたところ、有名な女性(!)の修行者だそうです。
この時代にそういう女性が居たというのにびっくり!!!
持仏といった大きさの祖師たち。
その4 祖師たち②→元 & 梁簾
吐蕃の次にチベットが脚光を浴びるのは、元との関係に於いてですね。
そこにつながっていくのが下の画像の方々。
ただし左端の像だけ人ではなく、祖師たちの教義にかかわる女尊。
私にとって今回一番の収穫は、連綿と続く師たちの存在を具体的な容で確認できたことでした。
教義や尊格などは本や写真で見ることが出来ますし、折々に展示もされていましたが、祖師たちがこのように一堂に会することはなかったように思いますので。
そして、祖師たちの頭上にある垂れ幕のような布。
これがとてもきれいできれいで・・・すっかり見とれてしまいました。
布で作ったパーツを一つ一つ縫い合わせているとても手の込んだもので、アップでお見せしたいくらい。
えー、やがて元の時代になると、上の画像の右端、ロマンスグレーがステキな祖師の二代あとの座主(あってます?)パクパが、元の初代帝師となるんですね。
なんと!その帝師の証である印が来ていましたよ。
10cm四方くらいあったでしょうか。志賀島の金印しか見たことがないので、なんだか余計に大きく感じました。画像は三種あった中の一つです。キャプションにはパスパ(パクパ)文字の印文を押したものもありました。
パクパの像は小さいものが来ておりまして、祖師たちとは違うコーナーに分類されておりました。
その5 プルパ
こんな?*もあるんですねー。かわいいけれど、魔を封じる仏具なのです。動物は尊格につく従者や門衛なのだとか。
魔女仰臥図を見たとき、寺院というのは国土にうがたれた?*?みたいなものだなぁと思ったので、このコーナーに反応してしまいました。や、それ以前に、動物たちの表情が可愛かったというのもありますが。
国土に巣くう魔を封じるのが寺院だとしたら、これはその原理をぎゅうっと凝縮した、究極の形なのかもしれませんね。
*?・・・文字化けしている方へ。という字です。
-----
EXTENDED BODY:
その6 その他もろもろ
・インドの神々とのミックス度は予想以上でした。本当に何でも取り込んじゃったのですねー(←インド密教が)。
でも、父母像にしてもなんだかやたら理屈っぽくて(失礼!)、カジュラホのミトナ像のようにならないところはやっぱり仏教なのかな?と思ったり。関係ないかしら。
・仏像の頭髪が、ラピスラズリのような青い色をしているのが印象的でした。それと、仏像仏具に宝石がたくさん埋め込まれていて、ターコイズが利いていたことも。まるでチベットの紺碧の空と呼応しているようでしたよ。(ターコイズって魔除けでもあるんですって。)
・今回来ているものに限ってのことかもしれませんが、明の永楽・宣徳時代に作られたものが結構あったのも発見でした。永楽帝って、どんだけ手を広げてたんでしょう。
念のため、永楽帝と同時期の高僧って誰かなーと探してみたら、ツォンカパ、ダライ・ラマ一世がいましたよ。うぉ!
でも、当時はたくさんある宗派の一つに過ぎなかったんですね。交流なかったみたいですもんね。
永楽帝と言えば足利義満の勘合貿易。足利義満ってツォンカパと一歳違いですって!へぇ~~~。
・「チベット文化を総合的に紹介する」には時間もスペースもとても足りませんが、慎重な配慮を感じる今までにない展示だったと思います。サキャ派の祖師たちと明の白磁龍文高足碗が同居する展示なんて、そうないと思います!
私の感想は以上でございます。
二回に分けようかとも思いましたが、一気に書いてしまいました。
長々とおつきあい下さいましてありがとうございました。
チベット展は、九州を皮切りに、北海道近代美術館→東京上野の森美術館→大阪歴史博物館→仙台市博物館で開催されるそうです。関西の方は、現在みんぱくで開かれている「ポン教の神々」展を見られておくといいのでは?私も見たいのですけど、会期中には行けそうにありません。残念。
密教以外の要素も色々あり、全体的に時系列に沿った展示になっていて、わかりやすいチベット文化入門になっていたのではないかと思います。
では、個人的に印象に残った展示に絞って感想など。
長くなるので箇条書きにしますね。
(画像はぶろぐるぽにエントリーすることで博物館から提供していただいたものです。)
その1 吐蕃王国のチベット統一
吐蕃の成立から説き起こした最初の展示は、私にとってはいい導入でした。
「吐蕃」となれば話は別、「チベット」「ポタラ宮」の語につきまとう現在のアレコレをとりあえず措いておいて、歴史の世界に入ることが出来たように思います。
↑
正面に見えているのは、像について書いた紙をランダムにひいて、出たものを探そうというコーナー。おみくじのような体裁で遊び心満点。
友人を見ていたら、ちょっとこれに引っぱられ過ぎかなぁとも思いましたが、チェックポイントがあると鑑賞にもメリハリが出ますね。
その2 パドマサンバヴァ
チベット仏教でこの方の存在ははずせません。
綺麗なレリーフですが、ツェチュ祭のイメージがあったので、壁画の一部だったようなコレはなんだか寂しい気がしました。
しかも剥がしてきていると言うことは、以前はどこにあったものなのでしょう?
出自も気になる展示でした。
その3 祖師たち①
吐蕃後の仏教を担っていった祖師たちの像も、大変興味深いものでした。
アティーシャ、ミラレパ、ツォンカパ、・・・と聞き覚えのある名前が続く中、初めましての名前を発見。・・・・・マチク・ラブドゥンマ?え?誰それ?
この方は、像ではなくタンカで、私たちにはおなじみの教え「捨身」の図だったので、とっても気になりました。
帰って調べたところ、有名な女性(!)の修行者だそうです。
この時代にそういう女性が居たというのにびっくり!!!
持仏といった大きさの祖師たち。
その4 祖師たち②→元 & 梁簾
吐蕃の次にチベットが脚光を浴びるのは、元との関係に於いてですね。
そこにつながっていくのが下の画像の方々。
ただし左端の像だけ人ではなく、祖師たちの教義にかかわる女尊。
私にとって今回一番の収穫は、連綿と続く師たちの存在を具体的な容で確認できたことでした。
教義や尊格などは本や写真で見ることが出来ますし、折々に展示もされていましたが、祖師たちがこのように一堂に会することはなかったように思いますので。
そして、祖師たちの頭上にある垂れ幕のような布。
これがとてもきれいできれいで・・・すっかり見とれてしまいました。
布で作ったパーツを一つ一つ縫い合わせているとても手の込んだもので、アップでお見せしたいくらい。
えー、やがて元の時代になると、上の画像の右端、ロマンスグレーがステキな祖師の二代あとの座主(あってます?)パクパが、元の初代帝師となるんですね。
なんと!その帝師の証である印が来ていましたよ。
10cm四方くらいあったでしょうか。志賀島の金印しか見たことがないので、なんだか余計に大きく感じました。画像は三種あった中の一つです。キャプションにはパスパ(パクパ)文字の印文を押したものもありました。
パクパの像は小さいものが来ておりまして、祖師たちとは違うコーナーに分類されておりました。
その5 プルパ
こんな?*もあるんですねー。かわいいけれど、魔を封じる仏具なのです。動物は尊格につく従者や門衛なのだとか。
魔女仰臥図を見たとき、寺院というのは国土にうがたれた?*?みたいなものだなぁと思ったので、このコーナーに反応してしまいました。や、それ以前に、動物たちの表情が可愛かったというのもありますが。
国土に巣くう魔を封じるのが寺院だとしたら、これはその原理をぎゅうっと凝縮した、究極の形なのかもしれませんね。
*?・・・文字化けしている方へ。という字です。
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EXTENDED BODY:
その6 その他もろもろ
・インドの神々とのミックス度は予想以上でした。本当に何でも取り込んじゃったのですねー(←インド密教が)。
でも、父母像にしてもなんだかやたら理屈っぽくて(失礼!)、カジュラホのミトナ像のようにならないところはやっぱり仏教なのかな?と思ったり。関係ないかしら。
・仏像の頭髪が、ラピスラズリのような青い色をしているのが印象的でした。それと、仏像仏具に宝石がたくさん埋め込まれていて、ターコイズが利いていたことも。まるでチベットの紺碧の空と呼応しているようでしたよ。(ターコイズって魔除けでもあるんですって。)
・今回来ているものに限ってのことかもしれませんが、明の永楽・宣徳時代に作られたものが結構あったのも発見でした。永楽帝って、どんだけ手を広げてたんでしょう。
念のため、永楽帝と同時期の高僧って誰かなーと探してみたら、ツォンカパ、ダライ・ラマ一世がいましたよ。うぉ!
でも、当時はたくさんある宗派の一つに過ぎなかったんですね。交流なかったみたいですもんね。
永楽帝と言えば足利義満の勘合貿易。足利義満ってツォンカパと一歳違いですって!へぇ~~~。
・「チベット文化を総合的に紹介する」には時間もスペースもとても足りませんが、慎重な配慮を感じる今までにない展示だったと思います。サキャ派の祖師たちと明の白磁龍文高足碗が同居する展示なんて、そうないと思います!
私の感想は以上でございます。
二回に分けようかとも思いましたが、一気に書いてしまいました。
長々とおつきあい下さいましてありがとうございました。
チベット展は、九州を皮切りに、北海道近代美術館→東京上野の森美術館→大阪歴史博物館→仙台市博物館で開催されるそうです。関西の方は、現在みんぱくで開かれている「ポン教の神々」展を見られておくといいのでは?私も見たいのですけど、会期中には行けそうにありません。残念。
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